Warehouse 30

เเวร์เฮาส์ 30

Bangkok, Thailand バンコク、タイ

”建築家が見つけた第2次世界大戦の遺構”

Charoen Krung通りのソイ30、チャオプラヤー川岸に近くにある古い倉庫群がリノベーションされて、静かな裏通りの中が人々の集まる賑やかな場所に変わった。7棟の連なった倉庫は時代を感じさせる如何にも倉庫の感があるオレンジ色の3角形の腰屋根をもつ。同じくオレンジ色の大きな扉も、倉庫時代のそのままだ。第2次世界大戦まで話は遡ることになるのだが、元々この土地は製氷や交通機関の運営で財を成した中国系タイ人の富豪であったLert Sreshthaputra(Nai Lert)氏のものであった。そこにこの倉庫を造ったのは当時タイに進駐していた日本軍であったのだが、終戦後には譲渡され倉庫として使われ続けた。それから時が経ち、時代が昔のようにこの付近の川を中心とする貿易から変わってしまったのであろう。この地域に商材を保管するメリットはなくなってしまったのか、リノベーションされる少し前の時代にはひと気のない半ば放棄されたような雰囲気になっていた。その頃の様子は幾つかインターネット上でも見られ、今は濃いグレーに塗られているファサードのブロックの壁はまだ素のままの白い色であった。一時期は倉庫を別の施設への改築の予定もあったが、建築家であるDuangrit Bunnag氏の目に止まったことから、この古い倉庫の運命は変わっていく。既に氏はその手腕で、チャオプラヤー川のほぼ対面にある古い倉庫をThe Jam Factoryとしてリノベーションし成功させていた。同じように手をできる限り加えない方針で改装し、複合施設として甦らせた。オレンジの扉のある開口部をくぐると、全ての倉庫間と繋がる1本の長い通路がある。店舗などに使われるフリースペースとの間に天井までの高さのガラスの壁と扉があり、ガラス越しに店内に梁や柱が続くのが見える。倉庫の棟は7棟あるが大きな端の倉庫は他より一回り大きく、よく見ると他の倉庫の屋根もいくつか大きさが違う。内部は大きな倉庫がある分、棟数より多い8ユニットに区切られており、店舗やカフェやギャラリーや多目的のスペース等が入居している。

Chavanich Building

Warehouse 30の倉庫群の対面には、白い外壁の直線でデザインされたアールデコ建築の2階建てのビルがある。ここではメインの倉庫群に目が行きがちであまり目立たない感もあるのだが、こちらも劣らずクラシックで瀟洒な雰囲気があり、個人的に好みである。Chavanich Buildingと呼ばれるようだが、はっきりとした建物名称は不明。Chavanich Company Limitedという現在は非破壊検査機器などの販売する会社のビルである。玄関は1階の真ん中にあり、その右端を現代美術を扱うATTA Galleryが、左端を家具デザイン事務所のP. Tendercoolが占めている。正面玄関から見える2階オフィスへの階段の手すりは1本の線を描くように緩やかなカーブと直線でデザインされ非常に美しい。古い日本や日本統治時代の台湾の建築などでよく見かける、またタイではあまり見かけない感がする。画像ではわかりにくいが、正面玄関の社名のフォントは、タイ文字にしては直線的で少し細長い垂直性のある独特なデザインであり、ドア両脇の窓格子は中央に社章をあしらったこちらもアールデコ調のシャープな直線と曲線を合わせた幾何学模様で統一されている。ビルの窓格子も直線的な幾何学模様やおそらく蝶だと思うのだが線を強調したカーブのあるデザインだ。細部に凝ったなかなかよいセンスだと思うのだが、あまりこちら側に目を向ける訪問者はいないようだ。創業当時の先代のChavanich氏は鉱石類の輸出業をしており元の倉庫を上述のLert Sreshthaputra氏より譲り受け、この場所に1942年頃にChavanich Buildingを建てたとのことである。

イベントホールとなる一番大きな屋根の倉庫。

正面から。扉のアートは「Teleport」。




これは後ろ側。裏の郵便局から撮った。
一番大きい屋根の倉庫。

使われていない状態の倉庫の様子。
白い柱はリノベーション前の古い写真にもあり、そのままだ。

各倉庫を繋げている通路を見上げる。
表側の壁はブロックを積んでいる。

オレンジ色の倉庫の扉に描かれたアートと同じ、
Kantapon Metheekul(Gongkan)氏の作品。

斜め上の通気の格子から光が漏れる。
店舗などのスペースと通路はガラスで仕切られている。


倉庫の向かいのChavanich Building。
窓格子も社名のフォントも直線的なアールデコ調。

1階左端には木材を使ったハンドメイド家具を
デザインするP. Tendercoolが入居している。



美しい直線と柔らかいカーブ、とても好きなデザイン。

1階右端はATTA Gallery。
窓格子はシンプルな線のモチーフは蝶かな?

チェンマイの陶芸家Nupol Wiriyawong氏の展示。
こちらの窓格子は幾何学模様。

作品はギャラリーの雰囲気に映えて良い雰囲気だ。