Lhong 1919

廊 1919 ล้ง 1919

Bangkok, Thailand バンコク、タイ


”海上貿易が花開いた、栄光の時代が甦る”

チャオプラヤー川に向かって開いた三合院というコの字型をした、バンコクでは数少ない伝統的な中国の様式の建築である。通常はコの字の開いた部分は門があり道があり、しかしこの建築は川を門側として正面に向け、そして本来は住居として造られたものではない。厳密に三合院と呼べるのかわからないが、知る限りこれとこれに近い様式を含めバンコクでは数カ所しかないもので、やはり貴重なものだ。テーマパークと化した姿なので全体に綺麗に改修はされているが、壁や天井、未使用の部屋などを見るとレンガ・モルタル・木材で作られた過去の姿を留めている。以前改修される前の倉庫時代の写真を見たことがあるが、2階のバルコニーから降りる、いくつも連なる階段のデザインはそのまま活かされている。その両翼の一部と中央の母屋のバルコニーは床の木材を少しギシギシいわせて歩くこともできる。元々は火船廊(Huai Chung Long)、つまり蒸気船ターミナルと呼ばれる埠頭のある港湾施設で、Phisanbut家によって1850年頃に造られた。当時は貿易の中心としてアジア各地からの輸入品の展示などに使われ、中央部に航海の守護神である女神の媽祖が祭られた廟もある。1919年になって精米や貿易、その後保険や金融で財を成す潮州系富豪の黌利(Wanglee)家の2代目陳立梅氏の手に渡り、この建物は事務所や米等の農作物の倉庫、労働者の住宅となった。末期は崩壊寸前の有様であったが、長い歴史をもつ黌利家が現代に渡りこの地を引き継ぎ、その末裔であるRujiraporn Wanglee女史が再建に尽力を注いだ。一般的には開放されていないのであまり日の目をみないがこのLhong 1919の隣には別の三合院建築のWanglee Houseと呼ばれる美しい住居も残っている。実はこのLhongという名称は潮州語の廊という字の読み方ではない。潮州語話者の中国系タイ人に聞いてみたところ、タイ育ちの潮州系でないとわからないタイ語の建物を意味するโรง、ローンとの掛詞では、という答えだった。

川を背に真正面から中庭と母屋を見る。


木製のバルコニーを見上げる。






未使用の部屋の中の壁はとてもいい。




塗りつぶされていた花や鳥の絵を名工が修復した。
隣は修復中。

2階のバルコニー。張り出したベンチに座っている人もいた。
壁際のガラスは修復した窓枠の絵を保護している。

向こうに見えるトタンの倉庫も昔のまま。

これは少し整えすぎだけど、壁はよい。


窓枠に男の子のペイントが。
元々マレーシアに多かったけど、あまり好きではないんだけどね。

閩南建築の屋根頭頂部の飾り、馬背。これは風水の木型と見る。