The East Asiatic Company Building

อาคารบริษัทอีสต์เอเชียติก

Bangkok, Thailand バンコク、タイ


”イタリア人建築家が東洋のヴェネチアに想う”

デンマークの貿易・海運企業のThe East Asiatic Companyのオフィスビルであったが現在は移転し閉鎖されている。過去にBangkok Design Weekの展示やイベントで一時的に内部や外部のみの公開をされていたが、修復はされておらずほぼ手が入らないままで放置されている状態である。塗装は剥げ、一部の窓は落ち壁は崩れてしまってはいるものの、当時の貿易の拠点となるチャオプラヤー川に面と向かい威厳をもって建つ、水辺に映える美しい建築だ。タイへ一時定住もしていたイタリア人の建築家であるAnnibale Rigottiによって設計されたヴェネチアン・ルネサンス様式の建築で、他にバンコク市内にいくつかの作品を残しており、近辺でも同じように川岸に建つサイアム商業銀行のTalat Noi支店も氏の設計である。3階建てで規則的にアーチのある窓が並び、地上から2階のホールへ上がるための正面左右に振り分けた階段がある。2階の窓のアーチにはCaduceusと呼ばれるギリシア神話のヘルメスが持つ双翼と2匹の蛇が絡まる杖があり、商業のシンボルとして使われているのだと思う。頭頂部にはチェーンの絡まる錨を描いたフラッグが板状のペディメントに彫刻されているのが見える。このビルが建造された正確な年度は諸説あり不明であるが、1900年にはオフィスとして使われていたので、それよりも前ではあろう。そして、1995年まで継続して同社で使用されていた。このThe East Asiatic Companyはタイを訪れサイアム王国所有船の船長になったデンマーク人のHans Niels Andersenが1884年にチーク材取引のための前身となるAndersen&Coをタイに設立したところから始まった。その後1897年になってから、デンマークとタイや東南アジア間の貿易のためにデンマークのコペンハーゲンで新たに設立した企業で、アジア各地に支社を置き多国籍企業として発展した。1947年には日本へも進出している。バンコクではこのオフィスビルと大きな倉庫群をチャオプラヤー川下流側に所有していたが、倉庫はAsiatique The Riverfrontと呼ばれるテーマパークとして改装された。現在は売却、再編され以前のように海運業を主としてはいないが業務は継続しており、東南アジアとヨーロッパ航路の黄金時代を知る歴史ある企業だ。


対称にバランスのとれたデザイン


これは別の日のイベント直前で邪魔な駐車がなく、階段を撮ることができた。
隣のビルは元Banque de l'Indochine、インドシナ銀行。

ホールへの階段とアーチ。彫刻で装飾されている。

だいぶ荒廃している。


小道を挟んで別棟が隣にある。


通りから連絡通路を見上げる。奥はAssumption Cathedralに向かう道。



教会側から通りに向かって連絡通路を見上げる。

2階のホールから左右に振られた階段を見下ろす。

アーチに彫られたCaduceus、商業の紋章。
よく見かける医療の紋章の蛇とは違うものだ。

2階のホール。



1階玄関前のホール。荒廃している。
床にも錨のマークが描かれていたが汚れで見えなくなっていた。