มาเธอร์โรสเตอร์ ประตูผี

Bangkok, Thailand　バンコク、タイ

”伝説のMotherが淹れるコーヒーを飲みに旧市街へ”

旧市街の2階建てのショップハウスに、伝説の、と言えそうな腕のよい”Mother”がコーヒーを淹れるカフェがある。なんとも行きにくい場所なのであるが、元々このMother Roasterの出発点は、これもまた、なんでこんなところに店を作ったのかよくわからないフアランポーン駅から歩いた運河沿いの通りにあった。バス通りではあるが、建築材料問屋や工務店が並ぶ通りの一角にある掘っ立て小屋のような場所にコーヒースタンドを造り、カウンターでドリップしたコーヒーを売っていた。そんな場所でも腕に評判が立ち、たくさんの人が集まっていたのだ。やがてその小さな店は場所を移り、Talat Noi地区のMother Roasterとして、更なる評判を呼んで大盛況となったのだが、その後新たに2号店となるこの店舗をプラトゥーピー、お化けの門と呼ばれる地区に開業したのだ。グレーの古びたショップハウスは、格子のタイル屋根とガラスも無い間口の狭い窓、旧市街で見かけるデザインだ。このタイプは大概クリーム色の壁と緑の窓枠に塗られているけれど、ここは孤高に拒否を貫いている。煤けた外壁には煤を払って刻んだようなローマ字が見える。1階の入り口は綺麗に改装されていて、ガラスは中がよく覗けず一見カフェに見えないのだが入ってしまって大丈夫だ。入口ドアの真正面にいるMotherへTalat Noiへはもう行かないのかと聞いたところ、「あっちは若いのに任せて、こっちは老人でやっていくのよ」と面白そうに笑っていた。彼女はもうお祖母ちゃんと呼んでもいい歳だと思うのだが、先ほどとは変わって真剣な顔つきで淹れるドリップを見ていると、コーヒーの抽出というのは技術と経験なんだなと独り頷いてしまう。バンコクでは故あってカフェであまりコーヒーを飲むほうではないのだが、ここは素直に美味しいと思う。本店とも自身の好みの味と香りは実は若干違うのだが、こういう味も美味しいんだなと唸らせる技がMother Roasterにはあると思う。