House No.1

บ้านเลขที่ 1

Bangkok, Thailand バンコク、タイ


”I'm Still Here、そう聞こえた”

寄棟屋根に正面に大きな3角形のペディメントのある新古典主義を汲んだ優雅なコロニアル建築である。ラマ5世の治世からの長い、またタイでありがちな不遇な時代をも過ごして来た。現在のHouse No.1のある小路は当時Captain Bush Laneと呼ばれており、その名はJohn Bush提督が居住していたことから取られている。彼は船乗りから王船の司令官、港湾局長までを務めた王位を持つイギリス人で、造船所であるBangkok Dock Companyを設立した投資家でもある。今は壊されてしまった香港上海銀行や西洋人の社交クラブであるUnited Clubもこの近辺に居を構えていたし、ポルトガル大使館は現在と同じ場所のままだ。元々、House No.1が建つ前の土地は仏教寺院のものであったのだが、このように長崎の出島のようになってしまったこの地区では押し寄せる外国勢と折り合いが悪かったようだ。そのため寺院の土地は実質タイ王室が買い取りした状態で、寺院が去った跡にいくつかの賃貸させる建物を造ることになった。それがこのHouse No.1となり、タイへ進出した、Société Française des Distilleries de l'Indo-Chine(フランス領インドシナ蒸留所協会)、仏領インドシナで酒の醸造を独占していた企業の事務所となった。その後はテナントが入ったり住居になったりとしたようであるが、最終的には放置され廃墟となってしまった。酷い状態であったところを、2012年に王室財産管理局によって修復されることになる。廃墟の時代には2階の窓のアーチのところには木製のバルコニーがついていたが、改装時は取り払らわれてしまった。バルコニーは4個の3角形の持ち送りで支えられていたが、現在は同じ場所にガラスの庇を取り付けて同じデザインの持ち送りで支えている。美しく修復されており、完成後は結婚式などのイベント等に時折使われていた。1階に「Cafe Eiffel」というカフェが一時的に入居した際に一般公開され、美しい市松模様のタイル張りの床や淡いグリーンの溝のある天井などミニマルでシックな内装を見ることができた。

Louis T. Leonowens Warehouse

敷地の中で庭を挟んで左隣にある、切妻屋根に小さい屋根が載ったような腰屋根の細長い建物もまた別の歴史があった。これはLouis T. Leonowens Warehouseというレンガ造りの倉庫跡である。今は側壁の一部が大樹に飲まれてしまっている。当時のテナントはタイに現存する会社で、現在は業務形態は変わってしまったが当時はチーク材を扱い、その名の通りLouis Thomas Gunnis Leonowensというイギリス人が設立した商社である。倉庫だけは残っているのだが、事務所については上述の王室が賃貸させるために作ったHouse No.1とは別の建物が倉庫の左側にあった。現在は取り壊されて今は駐車場になっている。タイ育ちの本人は両親ともヨーロッパやアジアを舞台にした複雑な背景があり、特に母はAnna Harriette Leonowens、ラーマ4世(モンクット王)の子弟の教師であったことで有名である。最後にはタイで興したビジネスからは手を引きタイを離れ、イギリスで亡くなった。




横から。


裏側の庭から。

階段は上がることはできなかった。


カフェなので好きに座ってコーヒーを飲む。


裏口。

目の前はRoyal Orchid Sheraton Hotel。





いい壁。

駐車場の隅っこになぜ。

粗い画像であるが、倉庫の中。西側の妻壁。