Kian Un Keng Shrine

建安宮 ศาลเจ้าเกียนอันเกง

Bangkok, Thailand バンコク、タイ

”線香の煙の中で祈り続けた華人達の願い”

バンコクのトンブリー側で最古と言われる観音菩薩を祀る廟である。由来ははっきりとはわからないようであるが、元々トンブリー地区にあった2箇所の荒廃した廟を取り壊し福建系移民が現存の型に再建をしたとのこと。ラーマ3世の治世というので、1,825年頃から50年頃にかけての話だ。建安宮の「建」は自らの出自である福建からであろう。廟はチャオプラヤー川に向かって建っていて、対岸にある旧市街の花市場のはずれから近くの桟橋へと船が着く。Kuan An Kengとも書かれるが、どちらにしろローマ字転写は閩南語の発音とは合っておらず意図は不明である。ここでは一般的な表記のKian Un Kengとした。タイ語の「キアンアンケン」の発音は閩南語にまだ近いのではないかと思う。福建人が建立したとだけあって、閩南式建築の特徴である燕尾脊と呼ばれる、緩やかに湾曲した2段の屋根に、持ち上がった先端が燕の尾状に分かれた装飾を施されている。屋根最上部には龍と植物文様の飾りが載っていて、上段の屋根は裾の辺りで末広がりになっており、そこにも植物の装飾が付いている。屋根の曲線のバランスが絶妙な技で、台湾の廟だと言われても頷きそうな閩南文化の色濃いデザインだ。この中央が高く、側面が低い段になった屋根は三川脊と呼ばれる中国の伝統的な屋根の形状になる。この屋根のある棟は表玄関となり、途切れることのない線香の煙の向こう側、更にその奥の本殿に金色の観音菩薩が厳かに鎮座する。本殿内部の撮影は禁止。これ程の歴史ある、多くの中国系タイ人の心の拠り所が今でもバンコクで残っているのは素晴らしいことだ。



屋根の湾曲の絶妙さ。

金の字で「建安宮」。

旧正月の飾りが付いているので華美な印象だが
普段はもっと落ち着いた雰囲気だ。



花と雲のような文様の見事な木彫り。



バンコクの廟は極彩色の印象だが、
ここは色調を抑えていて、技巧が目立つ。

線香の煙が絶えない。

廟の入り口の横にある扉。

写真では静かな印象かも知れないが、
中国系住人の参拝客はひっきりなしで、撮影も大変。

一旦廟に入り横から外へ出ると、
ピンと切妻から突き出た門の燕尾脊が見える。

表からは見えない奥の棟の屋根。
こちらが観音菩薩を祀る本殿になる。